2019.6.8 知識
「髪の成長」と「睡眠」入眠直後の3時間が大切な理由?
睡眠時間の確保。よく「ちゃんと寝ていないと抜け毛も増える」などと言われますが、果たしてこれには根拠があるのでしょうか。「寝不足で肌が荒れる」なんて話も特に女性の口から語られることが多いように思います。ここではそんな疑問、睡眠と成長の関係について考えてみたいと思います。これを見れば、どうして入眠直後の3時間が髪の成長にとって大切なのかわかります。
睡眠のメカニズムを知ろう!
「髪の成長と睡眠の関係」を考えるために、まず睡眠のメカニズムを理解しておく必要があります。簡単にポイントを列挙するような形で睡眠について解説します。
レム睡眠とノンレム睡眠の2種類がある
睡眠には、レム睡眠と言われる「浅い眠り」とノンレム睡眠と呼ばれる「深い眠り」があります。まず、言葉について説明すると「レム睡眠」はRapid Eye Movementの頭文字で「速い目の動きの睡眠」という意味になります。逆に「ノンレム睡眠」とは、Non-Rapid Eye Movementの頭文字で「眼球が急激に動くことのない睡眠」ということになります。
レム(Rapid Eye Movement)睡眠の特徴
眼球がぴくぴくと動いている状態の眠りとは、「夢を見ている状態」の眠りのことです。これは夢を見させているということからも脳は起きている状態「覚醒状態」となります。よって、この時、私たちは「浅い眠り」の中にいます。
ただし、浅い眠りの中にいる時は、身体の力が抜けきっていて筋肉などを動かすことができなくなっています。これは、夢を見ている時にそれが現実と思って身体を動かしてしまうと危険が伴うからです。よって、見かけとは裏腹に、「脳は起きていて身体は動けなくなっている奇妙な状態」と言えます(「逆説睡眠」と言われたりします)。
夢を見る目的は、「精神性の回復」です。現実世界でうまくいかないようなストレスを疑似現実(夢)を使いながらうまくストレス解消しているわけです。稀に自分が死んでしまうような夢を見ることもありますが、これもある意味ではうまくいかない自分と決別をして新しい自分を誕生させるという精神性の前向きな作用になります。
ノンレム(Non-Rapid Eye Movement)睡眠の特徴
眼球運動の伴わない眠りというのは、一般的に言う「深い眠り」のことです。この時、夢を見てはないので「脳も休んでいる状態」となります。ただし、身体を支える筋肉は働いています。よって、「寝返り」をうったりすることが可能です。このような寝返りは、疲れやコリなども含め「身体機能の回復」の一環です。
ノンレム睡眠で身体の回復が行なわれている時、「成長ホルモン」も分泌されます。これにより「身体の発育や成長」も促され「肌のメンテナンス」や「新陳代謝」も活発になります。よって、この状態を毎日正しく確保できれば、髪の成長も阻害されなくて済むということが言えます。
レム睡眠とノンレム睡眠の推移
私たちの睡眠は、「ノンレム睡眠」からスタートし次に「レム睡眠」に移行します。そしてまた「ノンレム睡眠」に落ちていくような形で交互に繰り返されて継続していきます。一般的には90分程度をワンセットとして「ノンレム→レム」が繰り返され、平均的な睡眠時間6時間から8時間の間に、この推移が4、5回起こるとされます。
ノンレム睡眠にも4段階の層がある
通常、レム睡眠(浅い眠り)で夢を見ますが、その後のノンレム睡眠(深い眠り)でその夢の記憶は忘れ去られます。深い眠りとされるノンレム睡眠にもステージが4段階あり、深く到達すればするほど浅い眠りで見た夢の記憶は消去されると言われます。よって、朝いくつも夢の断片が残っているような場合は、きっちりと「ノンレム睡眠」を深い段階まで落とし込めていないということが言えます。
複数の夢の記憶は要注意!
朝、複数の夢の記憶を残している場合の要因は、寝ている場所や周辺が騒がしかったり、とても窮屈な場所で寝返りも打てずに寝ていることなどが考えられます。ここで問題となるのは、「成長ホルモンの分泌」はこの「ノンレム睡眠」の深い段階の眠り(ステージ3やステージ4)で活発に行なわれることです。
この「ノンレム睡眠」のステージ3やステージ4の深い眠りを「徐波睡眠(じょはすいみん)」とも言いますが、この「徐波睡眠」をしっかりと確保できないことには、成長ホルモンがしっかりと分泌されず、また夢も複数記憶に残したまま目が覚めるということになります。よって、朝いくつも夢を覚えているのが日常的に続いている場合、成長ホルモンの分泌がうまく行なわれていない確率が高いと言えることから、要注意のサインだと見れます。
入眠後、最初の3時間が大切な理由
さて、それでは「入眠後の最初の3時間が大切な理由」についてお伝えしましょう。上記の『睡眠のステージ推移(イメージ図)』を見ていただきたいのですが、平均的に90分をワンセットとして最初の2セット、つまり180分(3時間)はホルモン分泌が活発になる「徐波睡眠(ステージ3やステージ4)」に一番到達しやすい時間になっているのがお分かりになるでしょうか。
一般的には、眠りに落ちて概ね1時間ほどで眠りの一番深い場所に到達するとされ、その後、徐々に夢を見るレム睡眠に戻っていき、また深い眠りに推移します。しかし、ノンレム睡眠も毎回毎回ステージ3やステージ4にまで到達するわけもはなく、次にくるノンレム睡眠についてはその直前のノンレム睡眠よりも眠りの深さは浅くなっていく傾向があるのです。
このことから、平均的なワンセット時間の90分、この2倍の最初の3時間については、「成長ホルモン」や「新陳代謝」の面からも最も重視すべき睡眠時間であると言われているのです。よって、逆に考えると、朝いくつも夢を覚えている状態が頻繁にあるようであれば、肌質だけでなく毛髪面でも要警戒の状況にあると言えます。
成長ホルモンが出るとなぜ髪に良いのか?
さて、なぜ入眠直後の3時間が大切であるかはおわかりいただけたと思います。では、次に成長ホルモンが分泌させ続けることが、なぜ脱毛を予防することにつながるのかを考えましょう。
成長ホルモン→髪の成長のプロセス
成長ホルモンの分泌が行なわれると、以下のようなプロセスで髪への働きかけが起こることが知られています。
- ① 成長ホルモンの分泌
- ② インスリン様成長因子1(IGF-1)
- ③ 毛母細胞刺激(髪の成長を促す)
「インスリン様成長因子1」は、英語では「Insulin-like Growth Factor 1(GF-1)」とされるもので、成長ホルモンの分泌に刺激を受けて作られることが分かっています。これは髪の毛を作り育てる「毛母細胞」を刺激する作用がありますので、結果として毛母細胞の細胞分裂が盛んになり、髪の成長につながるというわけです。
「睡眠の価値」を理解した上での正しい調整
さて、ここまでお読みいただき、是非ともご理解いただきたいのは、「ちゃんと寝なければ抜ける」という側面についてです。睡眠と髪の成長に関して、簡潔に「成長ホルモン→IGF-1→髪の成長」と解説いたしましたが、これは「睡眠=発毛」を強くイメージしてもらうためのお話ではありません。どちらかと言うと、睡眠環境を適切に確保することの大切さ、「ちゃんと寝ないと抜けやすくなる」ということをお伝えするものになります。
まずは入眠後3時間の完全確保
例えば「最近抜け毛が気になり始めた…」という方であれば、こちらの睡眠のメカニズムの説明を参考にしていただき、きっちりと「最初の3時間」は邪魔のされない良質の睡眠を取れるように心がけていただければと思います。
90分で割り切れるポイントで調整
また「快適に目覚める」ためには、90分平均の「ノンレム・レム」のワンセットで睡眠時間が割り切れるように調整するのが良いとされています。これは、理想的な目覚めを考える時の話になりますが、深い眠りの「ノンレム睡眠」から夢時間の「レム睡眠」に戻ってきたタイミングで目を覚ませば、快適に気持ちよく目覚められると言われています。90分はあくまでの一般的な平均になりますので、最初は90分で割り切れる6時間や7時間半くらいで朝のタイマーをセットし、10分ずつずらすなどしながら自分なりの快適なポイントを見つけると良いでしょう。
薄毛対策は、総合的な生活習慣の改善から!
さて、今回は直接「髪の毛」に関わる話ではありませんでしたが、よく言われる「寝不足と抜け毛の関係」などについてはご理解いただけたと思います。基本的に先にもお伝えしたように、あくまで「抜け毛」を予防するという意味合いで、日々睡眠環境をお整えいただければと思います。
また、総合的なAGA(男性型脱毛症)対策といたしましては、他の記事でもご紹介しておりますが、「睡眠」だけでなく「食事」や「運動」、「ストレス」「シャンプー習慣」なども複合的に考えていく必要があります。
さらに、本質的な要素としての「遺伝的な側面」や薄毛のメカニズムとしての「男性ホルモンの影響」など、これらに対応していくためにはどうしても専門的な治療薬を用いることが効果的なものとなってきます。よって、ご自身でできる範囲の生活習慣を見直された後で、それでも薄毛や抜け毛の悩みが一向に改善されないということであれば、是非とも当クリニックにご相談いただければと思います。
医学的にも評価されているAGAの内服薬を処方し、効果が出せる治療に日々献身しております。このため、実績としてもたくさんの患者様から喜びの声を頂戴しております。どうぞ、お気軽に足をお運びいただければ幸いです。