2019.6.10 女性
産後は抜け毛が増える?出産後の薄毛対策と改善への道
出産を終え、病院を退院し「そろそろ子育てもライフにも慣れ始めて…」というようなタイミングで、何だか急にドサッと「抜け毛」が増えてしまう場合があります。驚かれる方も多いようですが、これは「産後の抜け毛」と言われるのもので、一般的に良く起こるものとして知られています。
それでも現実問題としては、「いつまで続くの?良くなるの?」とお感じだと思います。この記事では、このような「産後の抜け毛」について対策も含めてご案内したいと思います。
どうして産後に髪が抜けるの?
女性ホルモンのバランスの乱れ
女性ホルモンとは、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の2つの総称ですが、妊娠するとそれぞれの女性ホルモンの分泌量が増えていくことが知られています。「プロゲステロン」は子宮内の状態を整えながら赤ちゃんが成長しやすいように胎盤を形成し、「エストロゲン」は赤ちゃんの成長に合わせて子宮を大きくしたり、母乳の準備として乳腺を発達させたりすると言われています。
この時のホルモン分泌量の増加で、妊娠中はお母さま自身の毛が伸びやすくなったり、髪の毛が抜けにくくなる(ヘアサイクルの「成長期」がいつも以上に長くなる)などの影響も出ます。ところが、出産を終えるとそれまでのホルモンバランスがまた一気に変わり、一時的に「成長期」が強化されていたような髪についても、急激に「退行期」から「休止期」へとヘアサイクルが移行し、結果的に貯まっていたものが一気に「抜け毛」となって抜け落ちてしまうわけです。
二次的な要因も絡む
また、「女性ホルモン」のバランスの乱れ以外にも、髪の発育そのものに関係のある二次的な要因も考えられます。例えば、子育てによって「安定した睡眠時間の確保」が難しくなったり、「自身の食生活(栄養バランス)」が疎かになったりもします。加えて、「不慣れな子育てに対するストレス」もやはり出てきます。このような「睡眠」「食バランス」「ストレス」は、元々直接ではないものの間接的に「髪の発育」に影響を与えるものですので、これらも複合的に絡み合い、「産後の抜け毛」を強く誘発してしまうのです。
「産後抜け毛」はいつからいつまで?
出産後、3ヶ月後くらいで起きやすい
絶対的なものでないため一概には言えませんが、「抜け毛」が起こりやすいとされるのが出産後「3ヶ月後くらい」とされています。これは「ヘアサイクル」にも関係するのですが、一般的に髪の毛1本1本は「成長期(2~6年程度)」を終えると、それぞれのタイミングで「退行期(約2週間程度)」に入り、ここで髪の成長はストップします。この後、「休止期(3ヶ月~4ヶ月程度)」に入り少しずつ髪が毛根から離れていき、最終的に抜け落ちるというプロセスをたどります。
妊娠中のホルモン分泌量の増加、及び産後のホルモン分泌量の低下で、「成長期」から一気にこちらの「休止期」に流れ込む髪の割合が増えるため、結果的に抜け毛となって表れやすいのが、この「休止期」とも関係のある「3ヶ月前後」とされるのです。このようなことから、本質的な原因は、女性ホルモン「エストロゲン」値の低下であるため、通常は治療を考えるような類のものではありません。
長くても1年以内で元の状態に
いつまで続くのということで言えば、これも個人差があります。概ね半年も経たないくらいで元の状態に戻っていくことが多いようです。長くても1年もすれば、通常は元の状態に戻るとされます。ただし、先の項でもご案内したように二次的来な要因(「睡眠」「食バランス」「ストレス」などの影響)がホルモンバランス以外でも強く「抜け毛」を誘発している場合は、この限りではありません。
「産後の抜け毛」進行形の方のための対処法
「産後になぜ髪が抜けるのか」をご理解いただければ、焦って対処する必要がない問題であることはお分かりいただけると思います。それでも、「本当に元に戻るのか」と気になる場合もありますし、長期化を促す「二次的な要因」も、できる範囲で排除しておくに越したことはありません。そのためここでは簡単な「産後抜け毛の対処法」をご紹介したいと思います。
髪の三大栄養素を理解し、食事(栄養バランス)に気を配る
Step1. 髪に良い栄養素の基本を覚える
「タンパク質」「ビタミン」「亜鉛」が、「髪の三大栄養素」と言われるもので、髪の成長や発育を促しています。
Step.2 次に「タンパク質」について少し掘り下げる
髪の90%以上は「ケラチン」という「アミノ酸」の集合体でできた「タンパク質」です。よって、「タンパク質」を摂るというよりは、現実的には「アミノ酸」を摂り入れることを考えると良いということになります。
Step.3 髪に良い「ビタミン」についてももう少し知っておく
髪に良い代表的なビタミンは「ビタミンB2」、「B6」、「ビオチン」、「ビタミンE」などです。ビタミンを考える時、これらを意識して摂っておくと良いでしょう。
Step4. 各三大栄養素の主な食品を意識し、これらを献立に取り入れる
具体的に摂取しておきたい食品の例を挙げておきます。これらの食品をうまく日々の献立に取り入れていけば、「髪への栄養素不足」からくる「二次的な被害」をおさえやすくなります。
- アミノ酸…豆腐、納豆、マグロ刺身、カツオ刺身、鶏胸肉、牛豚レバーなど
- ビタミンB2,B6、ビオチン、ビタミンE…魚、乳製品、卵、バナナ、野菜、ナッツ、種実類など
- 亜鉛…生牡蠣、チーズ、牛モモ肉、レバー、煮干し、するめ、たらこ、ゴマ、海苔、卵黄など
頭皮や髪に良いシャンプーやリンスなどで工夫してみる
市販のシャンプーやリンスは、一般的には頭皮の皮脂には強すぎる「界面活性剤」が含まれていることが多いです。女性であれば、通常そこまで意識して気を配る必要もありませんが、この「産後の抜け毛期」に限っては、ある程度頭皮にも優しいシャンプーやリンス、もしくは女性向けの育毛シャンプーなどを選んでみるのも良いかもしれません。
市販のシャンプーであれば、「高級アルコール系界面活性剤」と言われるようなものが皮脂を必要以上に洗い流してしまうことで知られています。成分表にある「ラウリル硫酸Na」や「ラウレス硫酸Na」などが代表的なものですので、この時期としては注意したいものです。一方、「アミノ酸系界面活性剤」が使われているようなものが、頭皮や髪にも優しいということが言えます。
成分表の表記としては「ココイルメチルアラニンNa」、「ココイルグルタミン酸Na」、「ラウロイルグルタミン酸Na」、「ラウロイルメチルアラニンNa」などが代表的な「アミノ酸系界面活性剤」です。これらは、男性向けの育毛シャンプーなどにも使われていることも多く、「頭皮環境の正常化」という面では一役かってくれるものとしてお勧めできます。
もちろん、「産後の抜け毛」の本質は「ホルモンバランス」が原因ですので、シャンプーやリンスでどの程度の改善が見込めるかは定かではありません。ただし、この時期だからこそ気を配るという意味では、意識してみる価値はあると言えます。
睡眠への配慮(家族の協力を得る)
「一定時間、目を覚ますことなく眠ること」は、ホルモンの分泌に大きな影響を与えます。特に「入眠直度の3時間」は、肌や髪だけでなく身体の総合的なメンテナンスを考えても大切な時間だとされます。
「赤ちゃんの夜泣き」などに関しては、やはり一番にお母さまの対応が求められることが一般的ですが、でき得る限り家族の協力を得て、最低限「一日に3時間」くらいは「継続的な睡眠」が取れるように努めてください。そうすることで、少しでも早くホルモンバランスの乱れも解消されていくはずです。
産後の抜け毛増加は、焦らなくても大丈夫です!
髪は「女性の命」といわれるくらい、この上なく大切なものです。自分の命以上に大切だと思えるお子さまを授かった後でも、やはりその思いの本質に違いはないだとうと思います。よって、子育てをしながら我が子の成長に喜びを感じる反面、様々な要因が重なり抜け毛が増えていくと、女性としての自信を失ってしまうこともでてくると思います。
しかしながら、この記事でもご案内したように、「産後の抜け毛」の原因はその根本が「ホルモンバランスの乱れ」であることから、通常は時間と共に治まっていきます。このため、「1年を経過してもなお…」というような場合を除き、「何か治療をしなければ…」というようなことはありませんので、まずは冷静にお待ちいただくことが大切です。
それでも「具体的にもっと良いアドバイスが聞きたい」などもおありになるかもしれません。あるいは「半年経ったけどほんとに良くなるのか心配で…」などのご懸念も考えられます。このような場合につきましては、お気軽に当クリニックにご相談にいらしていただければと思います。当クリニックでは、女性の抜け毛「びまん性脱毛症」などの治療経験も多数ございますので、総合的にお役に立てる情報をご提供いたします。